刀の持ち方

かの有名な江戸時代の剣術家の残した書物から、日本刀の有効な用法とされる心得を見ていきましょう。数多くの真剣勝負に一度も負けたことのないこの剣術家は「一身の斬合いに勝ち、或いは数人の戦に勝ち、主君のため、我が身のため、名を挙げ身を立てんと思ふ」のが武士たる存在だと主張しており、それは剣術の徳を取得することにより実現できると断言していたとされています。いつでも役に立つように稽古すること。つまり常に真剣として稽古をすることを訴え、事実、その人物は刀の持ち方から考えを実践していたとされています。刀は、小指と薬指を締め、中指はゆる目もせず、人差し指と親指は添えて持つのみ。これは現代の剣道にも通ずるものであり、基本的なものを解りやすく具体的に分析して教示しているのは「とにかく戦うことでなく、相手を切ることを考えて太刀を取るべし」という最重要ポイントを念頭に置いた上でのことだと言えるでしょう。とにかく実践となると手が萎縮し、刀を持つのも容易ではなくなるため「死ぬる手」と呼ばれるように、死を受容しているような手の内となるそうで、それを回避する「生きる手」を働かせるために、単純で具体的な「相手を切る」という目的意識を持つことが重要だと説いているようです。これは実に当然のことのように感じられるでしょうが、生きるか死ぬかの戦いの中で、いちいち習った技に拘っていては、身体が萎縮し、有効打撃を与えることを忘れがちになるが、第一に「切る」という念を込めた手の内、握り方、加減というものを普段より明確に身につけることで、刀を有効に使う手の内が身につくと言えるのではないでしょうか。試し物などを切るときの手の内も、実戦の手の内も区別すること自体が敗北へと繋がるとも考えられるのではないでしょうか。

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太刀の道と己を知ること

日本刀の最大の特徴として「反り」を挙げてきましたが、また、その多くは「鎬造り」であるという点もあげられるのではないでしょうか。この事から、人を斬る時の軌道が、日本刀と西洋の刀剣とは異なることが想像されるのではないでしょうか。この日本刀の軌道を、かの剣術家は「太刀の道」と呼び、見えるはずのない道を通るように刀を振り抜くことを説いたと言われているようです。真剣勝負の場では、殺気立ってばかりで、落ち着いて「相手を斬る」ことができず、細かく刀を振り回しても何の役にも立たないわけであり、しっかりと太刀の道を見極めて振り抜くことが勝利の唯一の心得としていると言えるのではないでしょうか。また、道を知る前には、その武具についても熟知しておくことが望ましいと言えるでしょう。かの剣術家は、日本刀だけでなく、槍、薙刀、弓、鉄砲などの各武器の長所と短所を論じているようですが、脇差は相手と密接している場所で力を発揮し、刀はどのような状況であっても最強だと唱えているとされています。また、その長さにおいても文献を残しておりれには、どんな場合にも「敵に勝つ」という道理を知らないまま、刀の長さに頼って間合いを取るのは心の弱さの現れであり、長い刀に執着する心自体が、そもそも戦う者としての心得ではなく、好ましくないと記されているようです。また、逆に小太刀の刀法に関しては、常に後手にまわり、攻めの姿勢ではなく守りの姿勢を選ぶ刀法であるとして避難するような文献が残されているようです。刀の長さを見定めるためには、まず、己の内面を見定めるところに、刀の有効性が強く現れると言っても過言ではないかもしれません。